院長ブログ

2021.03.10更新

 

 2月末より「目が痒い」などと訴える花粉症(アレルギー性鼻炎、結膜炎)の患者さんが増えてきました。今回の特徴は、4から5歳くらいの低年齢のお子さんで初めて花粉症の症状が出る(花粉デビュー?)ことが目立つということです(ここ数年そういった傾向がありますが)。私が小児科医となって診療を始めた30-35年前頃にも花粉症はありましたが、今ほど患者さんは多くなく、10歳くらい以上のお子さんが多かったように思います。4、5歳で花粉症を発症するお子さんはあまり見かけませんでした。近年スギやヒノキの花粉が増えるという自然環境の変化や、低年齢のお子さんが食物アレルギーなどを発症するなどアレルギー素因の増加などが原因として考えられます。

 スギ花粉は2月末から3月末まで飛散するようす。ヒノキはこれより1か月くらい遅れるようなので、4月下旬までは花粉症に注意が必要ですね。一説によると関ケ原や大垣あたりのスギ花粉が濃尾平野に飛んでくるようです。確かに愛知県ではスギ花粉症が多く、岐阜県はヒノキ花粉症が多いですね。これらの症状のあるお子さんで、血液検査でスギやヒノキの抗体が陽性であれば花粉症の診断は確定します。同時にダニやハウスダストなど喘息系の抗体陽性もばしば見られます。
私共のクリニックではこういったお子さんに、抗アレルギーの点眼薬(ザジテン、アレジオンなど)や点鼻薬(フルナーゼなど)を処方しています。また7歳以上で症状が強いお子さんには、これら以外に経口抗アレルギー薬(クラリチン、アレグラなど)もお出ししています。7歳以下でも症状が強い場合、アレルギー薬を処方することもありますので個々にご相談下さい。

花粉症では「目が痒い」「鼻水が出る」などの症状のため、眼科や耳鼻科を訪れる方も多いと思いますが、血液検査で抗体をチェックしたり、お子さんの全身状態を把握できる小児科への受診をおすすめします。今年のお子さんの花粉症は「目のかゆみ」が例年より強いようです。また花粉症の方には果物アレルギー(りんご、桃、メロンなど)もよくみられます。

 

投稿者: なごやかこどもクリニック

2021.01.25更新

 

蛋白同化ホルモン(プリモボラン)内服中の注意点について➁の続きです。

6.この治療の目標

  プリモの内服を開始するお子さん(男児)はこのままの自然経過では最終(成人)身長が160cmに達しないと推定される方ですので、目標としてはまず160cmに到達することです。そこから更に3cmあるいは5cm伸びることを願っています(170cmまで伸びることは難しいと思われます)。
最後に
  低身長の思春期男子に対する蛋白同化ホルモン(プリモボラン)治療はまだ一般的なものではなく、保険収載もまだされていません。そのため、その治療法は完全には確立されておらず、国内の一部小児内分泌専門医により開発中です。今回のお知らせは私がこの数年間の経験から得た結果によるもので、個人的な見解(私見)とお考え下さい。今後この経験が広がった場合、この内容は変わり得るものとご承知ください。またこの治療を行う専門医の間でも意見の相違はあり得ると思われます。今治療を行われている方は、主治医とよく相談され、この見解は参考としていただければと思います。またこの治療に関してご意見、質問などがありましたらお寄せいただければ幸いです。

投稿者: なごやかこどもクリニック

2021.01.18更新

 

先日の、蛋白同化ホルモン(プリモボラン)内服中の注意点について①の続きです。

 

2.薬(プリモ)の量と飲み方
 プリモボランは1錠が5mgです。1日の量は通常 10-20mg(2-4錠)となっています、これを2-3回に分けて内服します。当クリニックではお子さんの体重と男性ホルモンの値によりますが2-3錠/日(時に4錠/日)で開始しします。1か月半(45日)後に血液検査を行いテストステロンが30 ng/mlくらいに低下していれば、その量を維持量とします。そこまで低下していなければもう1錠増量します。次の1か月半後に再度テストステロンの検査をします。
プリモは半減期が長いので1日1~2回の内服も可能です。朝、晩の内服でもいいのですが、朝は十分な時間が取れないお子さんも多く、当クリニックでは就寝前(あるいは夕食後1時間ころ)の内服をおすすめしています。

3検査について
 プリモ内服中は原則として3か月に1回の血液検査(飲みはじめは1か月半毎)を行っています。テストステロンや肝機能などのチェックを行います。またXP(レントゲン)による骨年齢の判定は6か月ごとに行います。

4.内服の期間について
  男児では骨年齢が14歳で骨端線が閉鎖するので、それまでがプリモの内服となります。ただ男児の場合骨年齢が14歳に達してもまだ背が伸びることがあります。こういう場合はさらに3か月くらいプリモの内服をおすすめすることもあります。

5.性腺抑制療法(リュープリン)との併用
  「プリモボランと性腺抑制療法と併用できないか」という質問を時々受けますが、当クリニックでは原則として行っていません。私共の経験ではプリモボランで十分に男性ホルモンが低下し、骨成熟も抑制されます。もしプリモボランで男性ホルモンが下がらない場合や副作用(肝機能障害など)みられた場合、リュープリンと併用あるいはリュープリンに切り替えることは考えられますが、今のとことそのような患者さんはありません。

投稿者: なごやかこどもクリニック

2021.01.12更新

 

蛋白同化ホルモン(プリモボラン)内服中の注意点について

 新年おめでとうございます。昨年はコロナ感染(パンデミック)で大変な1年でした。今年もまだしばらくコロナの猛威は続くことと思われますが、日本国民が一丸となって対処する必要がありますね(政府がもう少ししっかりとした対策をとることが重要なのですがね)。
低身長で思春期に達した男児が蛋白同化ホルモンであるプリモボラン(以下プリモと省略)を内服すると最終(成人)身長を改善する可能性があることについて、昨年の院長ブログ(3/23,4/27)に書かせていただきました。現在私どものクリニックでは月に約60名の低身長のお子さん(男児)にプリモを処方させてもらっています。これらの方々からいろいろな質問が寄せられ、その都度お答えしているのですが、今回この文章でまとめてお話したいと思います。現在プリモを内服されている方やこれからを検討している方の参考になれば幸いです。

1. 副作用(有害事象は除く)
 プリモを処方させていただいて数年(約180名)となりますが、これまでに大きな副作用はみられていません。ただ薬には多かれ少なかれ副作用はあり得るといえます。このプリモを大量に内服すると肝機能障害をきたす可能性があります。当クリニックでは3-4(時に5)錠/日を処方していますが、今のところ肝機能障害を起こした患者さんはいません(3か月に1回血液検査をしています)。もし1日10錠とかそれ以上内服している方があるとしたら、その副作用はあり得る思います。またこのホルモンの骨格はコレステロールでできているので、血中コレステロールは上昇する可能性があります。治療前にコレステロールが高い方にはプリモの投与は慎重に行っています(プリモの内服を終了すれば、正常値に回復します)。
それとこのプリモは男性ホルモンではありませんが、一部男性ホルモンの作用があります。内服して1-2か月程度で声変わりをすることが多いように思います。ただこれは男児ではいずれ来ることなので、副作用とは言えないかと思います(なので女児にはプリモの投与はしていません)。
 それと「プリモを内服すると精子の量が減るのではないか」という質問も時に寄せらせます。このプリモの製造販売元のバイエル製薬の「効能書」を見ると確かに副作用として「大量継続投与による精子減少など」と記載されています。通常薬の副作用に関しては、その根拠となる文献が示されるのですが、これについて同社に問い合わせてみたところ古い薬のこともあり、その証拠は明らかではないという回答でした。精子の形成には脳下垂体から分泌されるFSH(卵胞刺激ホルモン)が主要な役割を果たしているので、男性ホルモンの分泌が多少低下してもその影響は少ないと内分泌学的には推定されます。またそもそも精子は2-3か月ごとに産生されるので、仮にプリモで一時的に精子が減少したとしても、内服を終了すればすぐに精子形成は回復するはずです。
また小児等への投与で「骨端の早期閉鎖、性的早熟をきたすことがある」とありますが、これはまだ思春期に達しない小児(再生不良性貧血)に投与した場合に起き得ることと考えられます。ただ思春期に達している小児に投与する場合、骨成熟作用の強い男性ホルモン(テストステロン)の分泌を低下させるのでこの問題は生じません。

投稿者: なごやかこどもクリニック

2020.04.27更新

 私どものクリニックでは昨年4月より「オンライン診療」の環境を整えてきましたが、この度一部の患者さんだけが対象となりますが、これを拡大したいと思います。ただ小児科でこのシステムを運用するのには難しい点があります。オンライン診療が保険適応となるのは主に成人で糖尿病や高血圧といった慢性疾患で病状が安定している方に限られます(将来に適応拡大される可能性はありますが)。
 小児科ではオンライン診療はほぼ「自費診療」になります。当クリニッでは、主に私の専門とする「小児内分泌疾患」の患者さんについてオンライン診療を行っています。具体的には 1.低身長、思春期(早発)、夜尿症の相談(初診、再診)。2.内分泌疾患で通われている患者さんの検査結果(ホルモンなど)の説明。3.その他。また当面は第2.第4水曜日の昼休みの時間帯に行います。これらはすべて有料になることをご了承ください。
 小児科一般診療は一部「電話再診」も行っています(初診はありません)。こちらは保険診療となります。ただ今回のコロナ感染症に伴う応急的なものとご承知下さい。このような事態となってしまいましたが、皆様と我々医療機関が協力して、この困難を乗り越えましょう。

 

投稿者: なごやかこどもクリニック

2020.04.27更新

 私たちの体の筋肉や骨などの多くはタンパク質から成り立ちっています。例えば肉や魚などを食べると、消化酵素などによりアミノ酸という小さな分子に分解され、消化管(小腸)で吸収されて、血液中に運ばれます。このアミノ酸を再び集めてタンパク質(筋肉や骨)を作ることを「蛋白同化作用」といいます。この働きをするのが「蛋白同化ホルモン」です。「同化(どうか)」というのは簡単に言うと「作る」ということになります。この反対を「異化(いか)」といいます。つまり私たちの体では蛋白からアミノ酸、アミノ酸から蛋白ということが繰りかえされています。ですので筋肉や骨を作って背を伸ばすためには、食事でタンパク質をとることが極めて重要です。

 当クリニックでは低身長で思春期に達したお子さん(男児)に蛋白同化ホルモンの一つである「プリモボラン(メテノロン酢酸エステル)」を処方しています。思春期男児の男性ホルモン(テストステロン)の合成・分泌を低下させ、骨の成熟を抑えて「背の伸びる期間」を長くします。また骨を作らせる作用もあるので、この両方の作用によって最終(成人)身長を改善させることが期待できます。
 このプリモボランが保険で使えるのは「骨粗鬆症」や血液疾患の一つの「再生不良性貧血」などです。「背を伸ばす」ための治療には保険が使えず、自費診療となります。大量に内服すると肝機能障害などが起きる可能性がありますが、1日2-3あるいは4錠程度ではあまり心配はいりません(定期的な血液検査は必要ですが)。

 

投稿者: なごやかこどもクリニック

2020.03.23更新

 お子さんは一定の年齢になると思春期となります。男の子の場合日本人の平均は11歳になります(欧米男子は12歳)。肉体的な思春期ですが、男の子では睾丸の容量が4ml(あるいは3.5ml)になった時とされています。ただこれは家庭では判定が難しいと思います(お母さんが息子の睾丸を触るというのは無理ですね)。ですので恥毛(陰毛など)や声がわりなどがあれば、思春期に入ったと考えていいと思います。

 低身長(背の低い)のお子さんはほとんどの場合、思春期が発来するのが遅くなります(1-3年くらい)。ところがそのようなお子さんの中で、思春期があまり遅れない方があります(10人に1-3人くらいの印象)。こういうお子さんはまずは背が伸びるのですが、骨成熟が進むため最終的には早期に身長の伸びが止まり、低身長(成人身長)になることが多いように思います。具体的に言いますと、男児で思春期が初来する11歳でその時の身長が135cm以下の場合、成人身長が160cm程度になる可能性が高いと思われます。
 こういうお子さんには男性ホルモンを抑えて、骨の成長を促進させる薬(蛋白同化ホルモン)を内服することで最終(成人)身長を3-5cm程度改善させることが可能です(効果があまり見られない方も一部ありますが)。息子さんがそのような状況でしたら一度お問い合わせ下さい。

投稿者: なごやかこどもクリニック

2019.06.29更新

 今年も7月4日木曜日午前10時より、クリニック待合室にて七夕会を開催します。トランペッターの西崎さんをはじめ、3人のプロの音楽家の演奏を楽しめます。お子さん向けの曲も予定されています。まだ予約枠は空いていますので、皆さんでお越し下さい

投稿者: なごやかこどもクリニック

2019.01.09更新

 寒中お見舞い申し上げます。個人的なことになりますが、私はもともと高血圧があったのですが、心臓に血液を運ぶ血管(冠動脈)が狭くなり(狭窄)、その治療のため昨年12月25日より入院治療を受けました。この分野での治療には定評のある「名古屋ハートセンター:砂田橋」で治療を受け(血管バイパス手術)、治療は幸い成功し、1月5日に退院することができました。
 この間患者様にはご心配とともに、ご迷惑をおかけしました。また私の休みの期間中はクリニックのスタッフはもちろん、私の出身医局である名古屋大学医学部小児科の若手から中堅の先生方のお世話になりました(代務)。
 1月7日より、診療を再開いたしました。今回の治療で新た命なが与えられたものと考え、「なごやかこどもクリニック」をより良くするため、さらに努力・精進を重ねたいと存じます。

投稿者: なごやかこどもクリニック

2019.01.04更新

 

謹賀新年
 平成最後の新年を皆様清々しく迎えられたことと存じます。私どもクリニックは平成18年に開院し、25年に医療法人「なごやか浩隆会」となりました。今年の5月で開院13年目となります。この間に多くの皆様に来ていただき、小児科、小児内分泌専門クリニックとして発展してきました。
 今年は「猪」年となります。猪で有名な京都の「護王神社」に12月上旬に行ってきました。京都御所の近くにあるこの神社は、奈良時代に自らが天皇の地位を目指した僧の「道鏡」と戦った和気清麿を祭っています。清麿が都を出て九州の宇佐八幡宮に向かった際に、足に傷を負った彼を多くの猪が守ったというお故事が知られています(今から1200年以上前の話ですが)。そのため「足」や「腰」の病を癒す神社としても知られています。
 私どもクリニックは「猪突猛進」ではなく、これまで通り「一歩一歩着実」に皆様とともに歩んでいきたいと存じます。本年もよろしくお願いいたします。
          平成31年 元旦

 

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投稿者: なごやかこどもクリニック

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