4.適度な運動が成長・発達に必要
運動が成長モルモン(GH)の分泌を促進し、成長発達を促すことはよく知られています。運動や肉体労働が筋肉やその他の体組織を刺激し、ストレス反応としてコーチゾールや成長ホルモンの分泌が促進されます。運動にはジョギングなどの有酸素運動と、筋トレなどの無酸素運動があります。どちらもGHの分泌を増やしますが、無酸素運動のほうがより短時間に、多量にGHを増加させます。GH分泌負荷試験として運動負荷が以前はよく行われていました(私も名大病院在職中は低身長のお子さんにこの負荷検査を行っていました)。
無酸素運動をすると、筋肉内に乳酸がたまります。この乳酸が増加したことで脳下垂体が刺激されてGHが分泌されます。人間の筋肉の多くは化下肢や腰部にあるので、大人ではスクワットなどが有効とされています。ただ小さなお子さんには負担が大きいので、軽い腕立て伏せくらいがいいかと思います。有酸素運動としては軽いジョッギングや散歩、あるいはラジオ体操などがお子さんには適当かと思います(縄跳びもいいのですが、無理をして足を痛めないように)。実際の運動としては、この無酸素運動と有酸素運動の組み合わせがいいと考えられます(例えば、腕立て伏せ20-30回のあと軽いランニングや早歩き30分程度)。
小学生であればクラブ活動や地域のチーム(野球、サッカーなど)でこれができると思います。ただしこれらの運動もやりすぎは、成長には逆効果となることもあります。1日2~3時間程度の運動(クラブ活動)を週に2回くらいが適当かと思います。サッカーを3-4時間くらい、ほぼ毎日するというお子さんがありましたが、この年代では過度の運動と考えられます。こういうお子さんでは蛋白の必要量も増えますし、体のケガなどのリスクも増えます。学校への通学が30分くらいあるお子さんでは、土日などの休日に1時間程度家の近くなどの散歩をするといいでしょう。
「どんな運動が成長にいいですか」とよく聞かれますが、基本的にはどんな運動でも本人が好きで続けられるものならいいですよとお話しています。ただ筋肉を極端に増やす運動は、成長期のお子さんにはよくない場合がありますので、個々にお話しさせていただきたいと思います。よろしければ経過観察させていただけます