院長ブログ

2021.01.12更新

 

蛋白同化ホルモン(プリモボラン)内服中の注意点について

 新年おめでとうございます。昨年はコロナ感染(パンデミック)で大変な1年でした。今年もまだしばらくコロナの猛威は続くことと思われますが、日本国民が一丸となって対処する必要がありますね(政府がもう少ししっかりとした対策をとることが重要なのですがね)。
低身長で思春期に達した男児が蛋白同化ホルモンであるプリモボラン(以下プリモと省略)を内服すると最終(成人)身長を改善する可能性があることについて、昨年の院長ブログ(3/23,4/27)に書かせていただきました。現在私どものクリニックでは月に約60名の低身長のお子さん(男児)にプリモを処方させてもらっています。これらの方々からいろいろな質問が寄せられ、その都度お答えしているのですが、今回この文章でまとめてお話したいと思います。現在プリモを内服されている方やこれからを検討している方の参考になれば幸いです。

1. 副作用(有害事象は除く)
 プリモを処方させていただいて数年(約180名)となりますが、これまでに大きな副作用はみられていません。ただ薬には多かれ少なかれ副作用はあり得るといえます。このプリモを大量に内服すると肝機能障害をきたす可能性があります。当クリニックでは3-4(時に5)錠/日を処方していますが、今のところ肝機能障害を起こした患者さんはいません(3か月に1回血液検査をしています)。もし1日10錠とかそれ以上内服している方があるとしたら、その副作用はあり得る思います。またこのホルモンの骨格はコレステロールでできているので、血中コレステロールは上昇する可能性があります。治療前にコレステロールが高い方にはプリモの投与は慎重に行っています(プリモの内服を終了すれば、正常値に回復します)。
それとこのプリモは男性ホルモンではありませんが、一部男性ホルモンの作用があります。内服して1-2か月程度で声変わりをすることが多いように思います。ただこれは男児ではいずれ来ることなので、副作用とは言えないかと思います(なので女児にはプリモの投与はしていません)。
 それと「プリモを内服すると精子の量が減るのではないか」という質問も時に寄せらせます。このプリモの製造販売元のバイエル製薬の「効能書」を見ると確かに副作用として「大量継続投与による精子減少など」と記載されています。通常薬の副作用に関しては、その根拠となる文献が示されるのですが、これについて同社に問い合わせてみたところ古い薬のこともあり、その証拠は明らかではないという回答でした。精子の形成には脳下垂体から分泌されるFSH(卵胞刺激ホルモン)が主要な役割を果たしているので、男性ホルモンの分泌が多少低下してもその影響は少ないと内分泌学的には推定されます。またそもそも精子は2-3か月ごとに産生されるので、仮にプリモで一時的に精子が減少したとしても、内服を終了すればすぐに精子形成は回復するはずです。
また小児等への投与で「骨端の早期閉鎖、性的早熟をきたすことがある」とありますが、これはまだ思春期に達しない小児(再生不良性貧血)に投与した場合に起き得ることと考えられます。ただ思春期に達している小児に投与する場合、骨成熟作用の強い男性ホルモン(テストステロン)の分泌を低下させるのでこの問題は生じません。

投稿者: なごやかこどもクリニック