院長ブログ

2024.03.04更新

女児が思春期になると胸のふくらみ(乳房腫大)がみられます。日本では平均10歳です。この乳房腫大は家族(母親)や学校検診でもわかりやすいですね。低身長の女児では思春期の発来が遅れる傾向(1-2年くらい)がありますが、一部の女児ではこれが遅れずに、あるいは早期に見られることがあります。これらの低身長女児は適切な治療をしないと、最終(成人)身長が140-145cmとなることをしばしば経験します。ですので低身長の娘さんを持つ親御さん(特に母親)は娘さんが小学校2~3年生くらいで乳房腫大がないかどうかをよく観察していただきたいと思います。本来は学校検診で見つかるべきなのですが、時々見落とされていることがあります。これは学校検診にあたる医師が必ずしも小児科医師でないことや、養護教諭にこのような情報が届いてないことも原因の一つかもしれません。
 乳房腫大が7歳半より前に見られる場合「思春期早発症」が疑われます。ただ8歳以降に乳房腫大が認められる場合はこの定義には当たりませんが、最終身長が低くなることは同様ですので注意が必要です。こういうお子さんがありましたら、私どものような小児内分泌の専門医に相談していただくと良いかと存じます。この専門医は愛知県では約10名が認定されています。名古屋市と春日井市、それとこども病院のある大府市を中心に活動をしています。三河地方では豊橋市と豊田市に専門医がいます。
 思春期早発症あるいはそれに近い状態と診断されると、性腺抑制療法が行われます。リュープリンという薬剤を月に1回注射します。2年間くらいこの注射することが多いと思います(保険診療)。治療効果ですが、最終身長を3-5cm程度改善させることは期待されます(骨年齢が11歳未満で治療を開始した場合)。またこの原因の大部分は「特発性」と言って何らかの理由で脳下垂体が早期に思春期レベルに達するためと考えられています。一部の原因として脳腫瘍などによる「器質性」もありますが、女児では男児に比べて少ないことがわかっています。ただ女児でも4-5歳以前に発症した場合注意が必要です。
 女児の思春期早発症は早期に発見できれば、治療により最終身長がかなり改善できます。できれば家庭でお母さんが娘さんの乳房腫大に気づいていただくことが大事なことと思います。小学校5年生くらいで生理(初潮)がはじまり、驚いて受診されるお母さんがありますが、この時点では骨年齢が11歳を過ぎていることが多く治療の対象となりません。こういう娘さんは小学校3年生くらいで乳房腫大がみられたかと思われます。その時点で受診していただいてたら、治療ができた可能性があったのですが。

 

投稿者: なごやかこどもクリニック