今年のノーベル化学賞をそ合(そあい)憲三先生が、フランスのアンリ・カガン名誉教授とともに受賞されました。研究テーマは「不斉合成の新反応発見」というものです。この賞は日本人として昨年の北川進 京都大学特別教授に続き2年連続受賞で通算10人目となり、日本が化学研究に強いことをあらわしていると思います。
この「不斉合成」というのは、私も医学部時代に生化学の授業で習ったものですが、復習をしてみたいと思います。地球上で人間や動物の体にはアミノ酸がたくさん集まった蛋白質が必要です。このアミノ酸は右型と左型(鏡像)がありますが、地球上のアミノ酸はすべて左型で構成されています。これを例えると我々の手は右と左があるのですが、左手だけがあって右手がないということになります(実際にはありえないことですが)。この片方のアミノ酸だけを増やす「触媒」を発見したことで、2001年にこの化学賞を受賞したのが野依良治 名古屋大学 特別教授です。今回は、最初は同量であった分子に少しの差があれば、少ない方が減少していき、多い方が最終的に残るということを実験で証明したことが受賞の理由です。そして驚くべきことに、その反応は「触媒」によるものではなく、その分子そのものが「触媒」の役割を果たすということが証明されました。野依先生の理論をさらに広く発展させたものです。私が医学部でこの話を聞いた時には(今から50年くらい前になりますが)、「この謎は永遠に解明されないであろう」という雰囲気が支配的でした。
ノーベル化学賞:そ合憲三
不斉自己触媒反応