平成21年3月7日(土)第9回 学校保健・保健活動セミナー
パシフィックスクエア 名古屋錦ビル6F
第9回 学校保健・保健活動セミナー
こどもの成長に関する最新の知見
-治療可能な成長障害の発見と対応―
幼稚園教諭、保健師の方などを対象としたセミナーが名古屋で開催された。約50名の幼稚園や保健所の関係者が参加された。最初の講演は「ことばとコミュニケーション」という題で言語聴覚士の中川信子先生がお話をされた。その後私が「子どもの成長」についてお話をさせていただいた。
まず低身長の評価をして、それが病的なものかそうでないものかの鑑別が重要であることをお話させていただいた。低身長をきたす種々の疾患をお示しして、早期発見・早期治療で良好な最終(成人)身長が得られることも理解していただいた。ただ、低身長で受診されるお子さんのほとんど(約8割)は病的でない「体質性低身長症」で薬物による治療の対象とはならず、食事・運動・睡眠などが重要であることを具体例で提示させていただいた。
低身長のお子さんの早期発見(特に乳幼児)に幼稚園教諭・保健師などの方々の役割が大きいことも強調した。最後に、「低身長であっても病的でない健康なお子さんが前向きに生きられるよう、私たち大人が見守ってあげることが大事ではないか」という言葉で締めくくらせていただいた。
なごやかこどもクリニック 院長 上條隆司
平成20年12月4日(木) 「春日井市小児科医会 講演会」
ホテルプラザ勝川 春日井市
低身長の診断と最近の治療(GH療法)
―学校医の役割は小さくないー
低身長をきたすお子さんには様々な原因があります。最も多いのは病的でない体質からくる体質性(特発性)低身長です。私共のクリニックを受診される低身長のお子さんの約7-8割がこれに相当します。残りのお子さんに内分泌疾患(ホルモン異常)、染色体異常(ターナー症候群、プラダーウィリ症候群)、骨系統疾患(軟骨無形成症など)などが低身長の原因となります。内分泌疾患としては「成長ホルモン分泌不全性低身長」や「甲状腺機能低下症」などがあります。これらの疾患の診断や治療について解説させていただきました。
体質性低身長症のお子さんは原則として薬物治療の対象となりませんが、背を伸ばすための指導上の注意点があります。背を伸ばすのに最も重要なのは「正しい食生活で良質な蛋白を十分にとること」です。低身長のお子さんでは食が細く、偏食がみられることがたびたびです。適切な運動も成長には必要です。人間では成長ホルモンは夜間に分泌されますので、十分な睡眠をとる(小学生では10時間)ことも重要であることをお話しました。
低身長を誰がいつ発見するかという問題があります。本人や家族が気づいて小児科を受診されることもありますが、そうでないこともしばしばみられます。幼稚園や学校では同年代のお子さんの身長や体重を比較することができます。毎年これらの測定をする制度は外国にはみられないものです。学校医や養護教諭が少し注意していただければ、低身長のお子さんの早期発見が可能となります。
この日は約20名の小児科や内科などの先生方が出席されました。このうち多くの先生が学校医をされているようで、興味をもって話を聞いていただけたようです。いくつかの具体的な質問もいただきました。「低身長のお子さんをできるだけ早期に発見して、治療できるお子さんには適切に対処できること」の重要性を強調させていただいて講演を終了させていただきました。
なごやかこどもクリニック 院長 上條隆司
平成20年7月26日(土) 「つくしの会」懇談会
名古屋大学医学部附属病院構内 鶴友会館
軟骨無形成症と成長ホルモン治療
―GH治療の可能性と限界―
この日愛知県を中心とした東海地区の「軟骨無形成症」の患者さんやその家族約30名が名古屋に集まりPM1:00より懇談会が開かれました。
PM2:30より私が軟骨無形成症と成長ホルモン(GH)治療について約1時間お話をさせていただきました。
まず軟骨無形成症は約2万5千人のお子さんに一人くらいの割合でみられる骨の病気で、近年ある遺伝子(FGF-R3)の異常により起こる(多くは突然変異)ことを解説いたしました。
以前はこの病気と診断されても、整形外科や脳外科的な合併症の治療以外これといった治療法はありませんでした。
これらのお子さんでは成長ホルモンは分泌されているけれど、GH治療で身長を伸ばすことができることが明らかとなり、約9年ほど前より保険(小児慢性特定疾患)でこの治療が開始されました。
私どものクリニックでGH治療をしているお子さん(男女各1名)についてお示しし、最終的に140-150cmの身長に到達することを期待すると報告しました(治療しないと120-130cm)。
その他の治療として「脚延長術」についてご紹介しました。
これは足の骨(下腿骨)を切断し、特殊な器具を用いて周囲の神経や筋肉とともに骨を1日1mm程度伸ばすという治療で半年から1年近く入院を必要とします。
大変な治療ですが下腿骨、大腿骨の延長を行うと身長を20cm以上伸ばし、O脚も矯正されます。
名古屋大学整形外科(鬼頭浩史先生)では再生医療を用い多くの患者さんで良好な成績をあげていることを紹介いたしました。
GHは比較的簡単に自己注射ができ、副作用もほとんどなく安全な治療方法ですが(GH治療の可能性)、この治療だけで身長が140cm以上に達するかというと、それはかなり難しいと思われます(GH治療の限界)。
そのためGH治療を4から5歳くらいに始めて、小学校高学年くらいに脚延長術を行うのが現時点では良い方法かと思います。
GH治療は脚延長術までの補助療法としてとらえていただくのが現実的かと思われます。また今後の新しい治療についても少し触れさせていただきました。
この日は連日の猛暑のさなかでしたが多くの方に来ていただき、私の話が少しでもお役にたてれば幸いです。
また「つくしの会」の本部から堀越さんも来ていただき、会員の皆様といろいろと意見交換ができました。
この懇談会をきっかけに「名古屋(愛知県)で年1回くらい勉強会が開けるといいですね」という声が聞かれました。
最後に参加者全員で記念写真をとり、会はお開きとなりました。
なごやかこどもクリニック 院長 上條隆司